業にあえて厳しい言い方をすれば、社員の意識が目の前の仕事に集中し過ぎではないでしょうか。特に研究開発においては、世の中の動きを先読みし、そこで求められる技術を社会に先んじて生み出していくといった姿勢が求められます。加えて、業界全体を見据えて競合他社との違いを意識し、自分たちが優位性を発揮できる分野に重点を絞っていくことも必要でしょう。石井 研究開発現場を率いた経験の長い竹内さんならではのご指摘ですね。今言われたような姿勢があるかどうかで、社員のモチベーションも左右されるのでは?竹内 他社の先行技術に追いつこうとする研究ばかりでは、なかなかモチベーションも上がらないでしょう。ある分野で第一人者になろうとすれば、まだ世の中に顕在化していないニーズを他社に先駆けて情報を掴み、対応していくことが必要だと思います。自分たちの強みを活かして、まだ世の中にないものを生み出すという姿勢で取り組めば、自ずと研究開発陣の士気も高まるはず。そうした面でサポートできるよう、前職での経験を示していければと思っています。 バル視点で見れば、その確保が今後ますます困難になっていきます。中計27にもあるように、サーキュラ―エコノミーやカーボンニュートラルの視点を重視しながら、社会インフラ企業としての使命を果たし続けることが、当社の企業価値を高めることにつながっていくはずです。石井 とはいえ、昨今の株価に象徴されるように、当社の企業価値は資本市場から十分に評価されていないのが現状です。近年は株主還元の強化にも取り組んできましたが、教科書的なことをやっているという印象で、市場にはあまり響いておらず、むしろ電池材料事業などの今後の動向に対して厳しい視線が向けられています。木下 株主還元の強化はもちろん重要ですが、そこが本質ではないと思います。当然のことですが、本業でいかに■けるかが至上命題です。ものづくり力を磨き上げて常に利益を生み出す体制を作り上げることに加えて、大切なのは投資家の皆様に「当社の未来は明るい」と感じてもらうこと。その意味では、取締役会のあるべき姿が問われていると思っています。当社は取締役会が意思決定するマネジメントモデルを採用しており、取締役会で議論を重ねて全員で決定するため、責任の所在が不明瞭になりがちで、経営スピードも遅くなりかねません。もっと執行側に権限を委譲して、現場でスピーディーに意思決定してもらい、取締役会では大きな方針・戦略を担うという体制に変えていくべきではないでしょうか。57木下 当社が扱う非鉄金属資源は社会課題の解決に必要不可欠ですが、やはり資源というものは有限であり、グロー石井 現状のマネジメントモデルが限界に来ているというのは私も同感です。当社の事業はいずれも現場での専門的な知見や経験が求められるため、正直なところ、取締役会では実践的な議論が難しい面もあります。木下さんの言われるように、マネジメントは現場に委ねて、取締役会ではモニタリングを重視するといった方向が求められるでしょう。木下 実際の事業については執行側に任せるしかないわけですから、取締役会ではステークホルダーの要請にどう応えていくかを議論していく方向に進みつつあります。 現状の取締役会における一番の課題は、変化に対応するスピードが遅いことだと考えています。特に材料事業は企業価値の向上に寄与するために取締役会のあるべき姿とは社外取締役鼎談
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