カーボンニュートラルを達成するには、GHG排出量の多い製錬事業において、画期的な排出量の削減を可能とする革新的製錬プロセスへの転換が必要です。そこで、ニッケル製錬において水素を活用した新しい低炭素ニッケル製錬技術や、塩湖からリチウムを選択的に回収する技術などの開発に取り組んでいます。ニッケル酸化鉱の水素製錬 ニッケル酸化鉱を水素で還元し、ニッケルを回収する方法を開発中です。基礎試験で実現の可能性を検討し、ニッケルの回収目標を達成しました。現在は、これを実現する装置の検討やスケールアップした還元炉による検証を含めたプロセス全体の開発に取り組んでいます。リチウムの選択回収 従来のリチウム回収プロセスでは、消石灰などその製造過程においてCO2が発生する薬剤を多量に使用していました。そこで、吸着剤を用いて選択的にリチウムを回収する、薬剤の使用量が少ない技術(Direct Lithium Extraction : DLE)を新たに開発し、GHG排出量の削減に努めます。現在、南米チリに設置したパイロットプラントにおけるプロセスの検証、吸着剤の改良を進めており、2030年度までの完了を目指しています。78全固体電池用正極材の開発 EV市場の中長期的な成長に伴い、全固体電池を含む高性能リチウムイオン電池(LIB)の需要が着実に高まりつつあります。当社は、これまで培ってきた車載電池用高容量正極材の開発・量産実績と非鉄金属の製錬技術を活かし、全固体電池用正極材の安定供給を目指しています。現在は、高性能かつ低コストな全固体電池用正極材をはじめとする次世代正極材の開発および製造プロセスの実証試験に取り組んでいます。さらに、研究開発基盤の強化を目的として、パイロット設備の導入およびその設備を設置する電池研究所第2開発棟の建設を進めており、2025年12月の完成を予定しています。本設備は、経済産業省のグリーンイノベーション(GI)基金事業の助成対象となっています。水素製造触媒材料の開発 水素はクリーンなエネルギー源として期待されており、水素社会の実現は地球温暖化対策やエネルギー自給率の向上に貢献します。その実現には、効率的かつ低コストで水素を生成・供給できる高性能触媒が不可欠です。当社はニッケル系触媒材料の開発を進めており、粉体合成・表面処理などのコア技術を活かして、高性能かつ低コストの水素製造用触媒材料の供給を目指しています。知的財産への考え方 当社は、他者の知的財産権を尊重しつつ、事業戦略や研究開発戦略に基づいた知的財産戦略のもとで、開発成果の特許網構築・秘匿を含めた知的財産の保護・有効活用に取り組んでいます。知的財産部は、事業部門や研究開発部門と緊密に連携して、この取り組みの実行に注力しています。また、知的財産の創出や技術契約への対応などに関する教育を実施して社員の知的財産への意識向上を図っています。これらの活動により、知的財産の面で新規事業の創出や事業の持続的成長をサポートしています。 また、当社では職務発明に対するインセンティブとして、報奨金を支払う制度を設けています。この支給対象は特許権のみならず特許などに相当するノウハウに対しても支給することとしています。職務発明等の出願時の報奨に加えて、対象となる特許権等によって生み出された利益相当分に対しても実績報奨金という形で支給することで、活発な研究開発活動を後押ししています。研究開発低炭素製錬技術の開発
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