境の整備、個々のスキルに依存せず、誰もが一定の成果を出せる仕組みづくりが急務となっています。 こうした状況を踏まえ、住友金属鉱山では2021年にDX推進委員会を発足し、全社的にDXに取り組む体制を整えました。製錬事業においても、「予知保全による稼働率向上」と「未来予測による操業支援」という二つの戦略を掲げ、DXを積極的に推進し、安定した操業と効率的な人材活用による持続可能な事業運営を目指しています。に個人差が生じるという課題があります。こうした課題を抱える一方、これまでデジタル機器を活用した改善が進まなかった要因は、現場のリソースとノウハウの不足です。 そこで、2023年度から現場のニーズを具現化するための外部専門会社の活用や、工務本部からの人的支援などのサポートを開始するなど、現場で不足する「ヒト・モノ・カネ」をサポートする体制を構築し、DX化を推進しました。 また、ニッケル工場と播磨事業所では「予知保全による稼働率向上」として熟練の従業員が培ってきた経験や、各設備の音・振動などの測定データ、設備で発生した異常事象をもとに、故障の初期兆候の可視化や故障タイミングを予測するシステムを構築しました。この結果、設備の半数以上で成果が出ており、突発的な故障による稼働率低下の防止や、部品交換頻度の適正化などが期待できます。 当社、金属事業本部を取り巻く課題として、「金属価格低下時の収益悪化」と「少子化等による人材確保の厳しさ」という大きな2つの問題があります。 ニッケルや銅などの金属は、外部環境や需給バランスの影響を受けて価格が大きく変動します。このような状況下で利益を安定的に確保するためには、低コストで安定した生産を継続することが不可欠です。しかし、設備トラブルなどによって工場の操業が停止すると、生産量が減少し、大きな減益につながる可能性があります。 また「人材の確保」については、少子高齢化や製錬に関する専門知識を学べる学科が全国的に減少していることなどをうけ、製錬所で働くための専門的な知識を持ったエンジニアの確保が難しくなっています。このような状況下においては、限られた人材で効率的に生産を行える職場環 当社の製錬事業の要である東予工場では、高温環境下で製錬を行っているため、デジタル機器の導入が難しく、十分なデータ取得が困難です。そのため、オペレーターは限られたデータに加え、現場で得られる視覚情報などをもとに総合的な判断を下す必要があり、作業者によって判断価値創造の中長期戦略85当社グループでは、DX推進方針に則り、企業価値の向上を目指したDXの推進に取り組んでいます。今回のClose Upは、金属事業本部が取り組むDX施策をご紹介します。金属事業本部では現場が抱える課題をDXで解決することで業務改革を行い、人が本来取り組むべき「付加価値を生み出す業務」に集中できる環境作りに挑んでいます。製錬事業の直面する課題デジタルトランスフォーメーション(DX)現場でのデジタル技術活用を推進製錬に革新を――金属DXの挑戦Close Up
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