重要課題・ガバナンス

リスクマネジメント

考え方・取組原則

考え方

当社グループでは、リスクには目的に対して「好ましいもの」と「好ましくないもの」の両方があるととらえ、事業および組織における目的の達成に影響を及ぼし、価値を保護する事象および価値の創造を不確かにする事象をリスクと定義しています。リスクマネジメントによって「好ましいもの」を最大化するよう目標および施策などを見直し、「好ましくないもの」を最小化するようプロセスを点検し改善して「中期経営計画」の達成、さらに「2030年のありたい姿」や「長期ビジョン」の実現をより確実にしています。

取組原則

当社グループは、国際標準化機構(ISO)が発行するリスクマネジメント活動の指針「ISO31000」を踏まえ制定した「リスクマネジメント基本規程」の中で以下の6つの原則を定め、長期ビジョンである「世界の非鉄リーダー」の実現を目的として、リスクマネジメントに取り組んでいます。

  1. リスクに直面する組織の長が責任者
  2. コンプライアンスを基本とする
  3. 潜在リスクは顕在化するものと認識し、必要なリスク対策を講じる
  4. 変化に伴い認識したリスクは、関係する者に共有化する
  5. 組織の階層・規模・役割・成熟度や地域的・文化的要因を考慮し、ステークホルダーの知識、見解および価値観も参考に、日常業務の一環として、リスクマネジメントを実施する
  6. マネジメントの仕組みと取り組みを継続的に見直し改善する

枠組み・推進体制

1999年に株式会社ジェー・シー・オーが起こした臨界事故を厳粛に受け止め、リスクマネジメント方針および重点施策の全社的取り組みなど、リスクマネジメントの推進および監視を行う機関として「リスクマネジメント分科会」を設置しています。社長を最高責任者として、当社グループを取り巻くリスクおよびその変化に対応する体制を整えています。この体制によって運用される当社のリスクマネジメントは3つの枠組みで構成されています。

■ 全社リスクマネジメント推進・監視体制
図:全社リスクマネジメント推進・監視体制

変更等があった場合

■ 全社リスクマネジメントの枠組み
図:全社リスクマネジメントの見直し

経営リスクマネジメント

当社の成長戦略や事業戦略の遂行に伴う経営・事業リスクの中で、戦略目標(中期経営計画)達成に影響を及ぼす可能性の高いリスクを「全社重要リスク」と定義し、取り組む仕組みがあります。全社重要リスクは、社長を含む執行役員が経営諸会議で議論し、取締役会で審議されます。全社重要リスクとして特定されたリスクに対しては、対応方針および責任部門を定めて取り組みを実施します。リスクマネジメント分科会では、これら全社重要リスクへの取り組み状況をモニタリングします。
また、全社重要リスク以外の経営・事業リスクについては、経営諸会議や各種委員会、中計・予算・決算・月次報告などを通じて、取り組みをモニタリング・推進しています。

拠点リスクマネジメント

各拠点では、年度単位で重点的に取り組むリスク(重点取組事項)のほか、通常の業務に潜在するリスクを社内外の状況などに基づいて把握・評価し、「個別リスク」(「主に想定されるリスク」参照)として取り組んでいます。現在、「個別リスク」はのべ1,300件余あり、これらの前提となる環境や条件(事業環境、操業環境、人、装置、作業手順、品質基準等)に変化や変更があったときは取り組み内容を見直し、新たなリスクとして対策を講じることで、日常的にリスクの低減活動を実行しています。また、毎年9月には「リスク認識強化月間」として、全社一斉にリスクの定期的な見直しを実施しています。

■ 主に想定されるリスク
  • 爆発・火災
  • 環境汚染
  • 法令違反
  • 品質不良
  • 労働災害
  • サプライチェーン途絶
  • 情報漏洩
  • 風評被害
  • 知的財産権侵害
  • その他 モラルの欠如に端を発する、不正経理、人権問題、背任行為等のリスク

危機管理

危機管理経営リスクマネジメントおよび拠点リスクマネジメントの想定を超える状況や、拠点単独での対応が困難と考えられる危機に備えるために、危機管理担当役員を委員長とする危機管理委員会を常設機関として設けています。この委員会では、危機に関する情報共有、事前対策の策定と改善、訓練による危機管理機能の維持および強化に取り組んでいます。また、緊急事態が発生した場合は、初期対応を協議し、事態のレベルに応じて全社対策本部へ移行し、対応や支援を行います。社長は、危機管理に関する最高責任者として、全体の統括を行います。
各拠点では、地震、津波、浸水、液状化、土砂崩れ、噴火などの自然災害に対して、拠点ごとにハザードレベルに応じた対策を推進しています。これには、建物の耐震補強、護岸整備、排水処理能力の増強、貯水タンク増設、飲食物の備蓄・非常用備品の充実などが含まれます。また、震災、火災、環境事故や海外におけるテロ・暴動・誘拐などを想定した訓練を実施し、資機材の操作不慣れ、ルールや手順の理解不足、またはマニュアルの不備などの課題に対処し、現地対策本部メンバーの判断力向上にも取り組んでいます。

今後の取り組み

2024年度は、「内部監査や自己点検によってリスクの低減取り組みと危機管理体制の実効性向上を図る」および「サイバーセキュリティリスクの把握と対応」の2つを重点取組事項としています。
1つ目の重点取組事項では、2023年度に実施したリスクの再把握結果と事故・災害などに対する各拠点の危機管理体制の見直し内容をもとに、リスクマネジメントの実効性を向上させるべく活動を推進します。
2つ目の重点取組事項では、サイバー攻撃によるシステム停止に伴う業務停止や情報漏洩など、企業経営に深刻な影響を及ぼす事案が日本国内の企業においても発生していることを受け、サイバーセキュリティ対策に当社グループ全体で取り組み、BCP(事業継続計画)に基づく対応を強化していきます。
これらの取り組みと並行して、新事業・プロジェクトにおけるリスク管理のほか、コンプライアンス違反、環境事故、労働災害、品質問題などを起こさず、事業目標を達成できるようにトップの主導で取り組みを進めています。また、台湾有事や中国での不当拘束など、安全保障に関するリスクが高まっている状況において、海外有事の未然防止だけではなく発生時対応も強化します。自然災害に関しては、能登半島で2024年1月に震度7、豊後水道で2024年4月に震度6弱の地震が発生するなど脅威が続いている状況に対し、震災対策の強化に取り組みます。さらに、次期中期経営計画におけるリスクの特定およびその対処方針についての議論を進めます。